初の本格アパレルブランドを立ち上げた、アーティスト・モデルの大社カリン。自ら描いた抽象画を最先端プリンタ―で生地に落とし、"身にまとうアート”なルームウェアに仕上げました。大社カリンが原画に込めた想い、そしてEM(em)で描く世界観とは? お話を聞きました。
EM(em)の中心にあるのは、夢と現実のように対となる境界線
ーーEM(em)とはどのようなコンセプトのブランドですか?
「EM(em)」の中心にあるのは、「夢と現実」「他者と私」のように、対になっているもの、ひとことで言うと“境界線”です。人は、対になっているものを意識して初めて、2つのものの境界線を認識します。そして、境界線を認識するからこそ、境界線をなくすことが出来ると思うんです。
ブランドを立ち上げるにあたり、こんなコンセプトストーリーをつくりました。
==============================
夢と現実、私と他者
境界を意識する事で境が発生する
『我思う故に我あり』とデカルトが説いたように
私が私であるとはどういうことか
を考える時点で私がそこに在るのだ
あなたが私をみるから
私がいて
私がいるからあなたがいる
もしこの世に人間が私たった1人だけならば
雨で出来る水たまりのみが
私を証明してくれるものになる
そして私は雨との関係を考え始めたりする
==============================
ーー境界線というコンセプトを踏まえ、今回のルームウェアに向けてどんな絵を描いたのでしょうか。
EM(em)は、漢字で書くと絵夢。Dreaming and Drawingということで、朝の「AWAKE/目覚め」、夜の「hypnosis/陶酔」を描きました。
抽象画なので、最終的には見る人の自由な解釈にお任せしたいですが、「AWAKE/目覚め」は朝起きたときの明るい光の中でおぼろげに夢のかけらを集めているイメージです。一方、「hypnosis/陶酔」は、眠りに入るか入らないかの曖昧な世界。交じり合うオレンジや赤で、まぶたの裏に感じる光を表しました。
同じ色でも、その時の感情によって、明るく見えたり渋く見えたり、見え方が違うかもしれません。どんな感情のときだって、どんな色に見えるときだって、全部ありのままでいい。着る人を丸ごと包み込み、感情に寄り添うEM(em)でありたいと思います。
おうちにいる時間くらい、自分らしくいてほしい。あなたの感情は、あなたのもの。
ーー「感情」というキーワードが出ましたが、大社さんは作品に感情を反映させているのでしょうか。
2016年頃から、感情に着想を得た絵を描いています。私は五人兄弟の真ん中で、小さな頃からまわりにたくさんの人がいたんです。みんなよくしゃべるから、聞き役に回ることも多くて。人の話を聞くことで、自分の感情が呼び起こされる経験を多くしてきました。家族や友達に嬉しいことがあれば、私も幸せな気持ちになったり、逆に悲しいことがあれば、心が痛んだり。人間の感情は、外の人間関係に刺激され、形を変えていくのが本質だと思います。そんな風に、いろんなエッセンスが混ざり合って生まれる感情を、抽象画に昇華させてきました。
忙しい日常の中で、どうしても自分の感情を二の次にしたり、誤魔化して前に進んだりしなきゃいけないことがあると思います。でも本来は、「こういう感情を感じてはだめ」というのは一切なくて。どんな感情もあなたのものだし、ありのままでいいんだよと思います。
EM(em)をルームウェアブランドにしたのは、おうちにいる時間、そして寝ている時間こそ、自分の感情に一番素直になれるのではないかと思ったからです。たとえ外の世界で心に蓋をせざるを得なかったとしても、おうちに帰ってきてEM(em)にそでを通せば、心が和らぎ、ありのままの感情をむき出しにできるーーそんなブランドを目指しています。
アートは飾るだけじゃなくて、着てもいいかもしれない。"まとうアート"という発想
ーー原画をルームウェアにするというのは、アーティストとしてどのように感じていますか。
絵を描く身としては、原画に共感してもらったり、インテリアの一部として楽しんでいただけたりすると、画家冥利につきます。ただ、人によっては原画を購入するのは、少しハードルが高いかもしれません。そこで、今回のようにルームウェアに仕立てることで、飾るのではなく、身にまとうものとしてアートを楽しんでいただければと思います。EM(em)を着ると気持ちが前を向くとか、家に帰るのが楽しみになるとか、そんな小さな変化をきっかけに、アートのパワーを感じてもらえたら嬉しいですね。
ーー原画を生地にしたということですが、仕上がりはいかがでしたか。
思った以上の仕上がりでした。日本にはまだ数台しかないというイスラエル製のプリンタ―で出力した生地は、インクの重なりや筆のかすれ具合も再現性が高くて。"身にまとうアート”としてお楽しみいただけるクオリティに仕上げることができました。先日行った展示会で原画を展示していたところ、お客様からも「再現性が高いですね」と褒めていただきました。
ーー最後に、EM(em)の今後の展望はありますか。
EM(em)で全人類を包み込みたいですね。5月末に原宿で行った展示会には、100人以上のお客様がきてくれました。中にはロサンゼルスやニューヨーク、メルボルン出身だという方もいて、文化を越えてEM(em)の世界観に共感いただけることを嬉しく思いました。
抽象画の素敵なところは、文化や言語もいっさい関係なく、見る人の数だけ楽しみ方や解釈の仕方があるところ。ジェンダ―や年齢、国境を越えて楽しんでいただけるブランドに育てていきます。
現在は秋冬に向け、新作の絵を描いています。AWコレクションも、ぜひ楽しみに待っていてください!