EM(em)誕生を記念し、アーティストの大社カリン、ブランドづくりを一緒に行った株式会社プラザクリエイト代表の新谷隼人が対談をしました。その様子を記事にしてお届けします。
新谷:プラザクリエイトは、写真屋パレットプラザをやっている会社です。30年以上プリント事業をしてきて、近年、アパレル事業に本格参入しました。そこで熱量を高く一緒にものづくりをしてくれるアーティストを探していて、大社さんにお声がけしたんです。
大社さん:最初は「本当に私のやりたいものづくりができるのかな?」ってちょっと疑っていました(笑)。でも、何度もなんどもミーティングを重ねるうち、プラザクリエイトのアパレルチームとは感性が似ていることがわかって。作品の世界観をわかってくれていることが安心材料となり、同じ方向をむいて走っていけると確信しました。
新谷:今回は大社さんの作品ありきで、ブランドをつくっていきました。普段着や機能性ウェアも候補には上がりましたが、大社さんの絵は心を癒すようなヒーリングの要素だったり、部屋を明るくするようなインテリアの要素があります。それを最大限に活かせるのは、外から帰ってきてほっとするおうちの空間なのではないかと、ルームウェアブランドの構想が生まれていきましたね。
大社さん:外でがんばっている人たちが、おうちにいるときくらい自分の感情に素直でいることを許せるようなルームウェアを作りたいと思いました。そして議論を進めていくうち、「もしかすると、寝ているときが一番自分らしいのでは?」という話になり、EM(em)のコンセプトが生まれたんです。EM(em)は漢字で書くと、絵夢。"Drawing and Dreaming”ということで、夢と現実の境界線をテーマに描きました。
新谷:今回、描きおろしてもらった作品について教えていただけますか。
大社さん:SSは「AWAKE/目覚め」と「Hypnosis/陶酔」です。左の2枚は、目が覚めて、明るい光の中で夢のかけらをおぼろげに思い出している感じ。右2枚はちょうど眠りに入るか入らないかの、現実と夢の狭間にいるイメージ。オレンジや赤で、まぶたの裏に映る光を表しました。
とはいえ抽象画なので、解釈は見る人にゆだねたいと思います。ただ、一貫して伝えたかったのは、どんな感情もありのままに肯定していいということ。変化の激しい日々のなかで、どんな感情を感じてもいい、どんなあなたでもいいーーそんな気持ちを込めて、描きました。
見るときの感情によって、同じイエローでも明るく見えたり、切なく見えたりするかもしれません。たとえどんな色に見えても、どんな感情になっても、そのすべては美しいということを、EM(em)を通して受け取っていただけたら嬉しいです。
新谷:普段の創作活動と比べ、今回の作品で意識したことはありますか?
大社さん:最近自覚したのですが、最終的にはルームウェアになるということを意識して描いていました。自分が感じたことを抽象画にするという点では普段の創作と一緒ですが、着る人たちに伝わりやすいように、少しかみ砕いて表現していたんです。自分の作品を自分で演出をするような、新しい体験でした。
新谷:ご自身の中でも新たな挑戦だったんですね。プラザクリエイトが長年培ってきたプリントノウハウを総動員したルームウェア。仕上がりはいかがでしたか。
大社さん:正直、最初の段階ではこのクオリティになることは想像していませんでした! 自分なりのベストを尽くしながらも、描いているものが本当にカタチになるんだろうかと、半ば不安だったんです。でも、最終的には思っていた以上に細かい表現ができました。原画に限りなく近い発色、忠実に再現された筆のかすれを見て、良くも悪くも、プリントだからといって誤魔化しがきかないなと。
新谷:プリントにするとチープになったり、原画と明らかに違ってしまったりすることもあるけれど、今回は原画に近いものができたということでしょうか。
大社さん:はい、思った以上にストイックなプリンターでした(笑)。この再現性が叶うのであれば、原画を飾るのと近い感覚で作品を楽しめますよね。アート×プリントだからこそできる、"身にまとうアート”の可能性を感じました。
新谷:今後もぜひ、一緒にアート×プリントの可能性を追求させてください! では、今後はEM(em)というブランドをどんな風に育てていきたいですか?
大社さん:ジェンダーや年齢を問わず、たくさんの方に着ていただけるブランドにしたいです。展示会にはロサンゼルスやニューヨーク、メルボルンなど、海外からの方も多くいらっしゃって、作品を褒めていただきました。バックグラウンドは違えど、何かを感じていただけるブランドだという手ごたえがあったので、海外進出もいいかもしれませんね。EM(em)というブランドで全人類を包み込みたいです! 今はAWに向けて新作の準備を進めているので、ぜひ今後もお楽しみに。